<キレイ:なんかとてもいい感じ>
キレイで背筋の伸びた白髪のおばさん(以下、KO)が重そうな扉を開いて出ようとしていた。そこに私が図らずも続いてしまう形になった。
KOは自分の細めな身体がすり抜けられる最低限しか扉を開かなかったので、私は重い扉を開きながら出た。
後ろに続いている私に気づいたKOは、なんか申し訳なさそうにしていた。それに対してどうすればいいかわからなかった私はとりあえず会釈をした。
扉を出て階段を上る。
ときは雨の降っている夕方だったので、私は折りたたみ傘を開いて歩こうとした。しかしKOは傘をささずに濡れながら歩き始めた。手ぶらだったのでそもそも傘を持ってすらいなかったのかもしれない。
その後ろ姿を見た私は、進みたい方向も同じだったし何か思うところがあって、「さっきドアでありがとうございましたどちらまで歩かれますか」と怒涛の早口で傘をKOの頭上にかざしながら追いかけた。すると、「やあ、すみません。すぐそこですので、あなた濡れますし。ありがとうございます。」みたいな感じで、すぐ近くの建物へと入ろうとするふうだった。
「傘ハラスメントをしてしまった」
そんなことを考えながら私は前進を再開したのだが、5mくらい進んだ頃に「ありがとうございます」と声が聞こえて、振り返るとKOがお辞儀をしてくれてた。雨に降られながら。
私も会釈をした。
ものすごく、キレイだった。
そういえば先日、ブログを読んでくれた人が、「オフトゥンとか好きですよ」とコメントをくれた。嬉しい。
ちなみにオフトゥンとは、お布団のことである。
あと、私に「普通さ」を見つけた人がそれを好んでくれたことを思い出した。非常にありがたいことだ。だけど、それはただ自分が無関心だからかもしれないな、と思うところもある。
どうでもいいことって多い。
そんな私がいま気にしているのは、「はよ梅雨明けてくれ」ってことくらいだ。
そしてあなたたちはこう言うだろう。
「それな」