4月末頃、私は父親の還暦祝いを買おうとしていた。いったい何を渡したもんだろうか。そういえば父親とは鹿児島に薩摩切子を買いに行ったことがあるな(私は同行しただけ)。じゃあもう、還暦祝いは有田焼とかなんかそういう焼き物でいいんじゃなかろうか。
そういった陶器に詳しい(と思っている)友人に聞いてみたところ、ゴールデンウィークに信楽作家市をやってるらしい。信楽って滋賀県なんか。近くていいじゃない。そんなもん行ってみるしかなかろうに。ほんと頼りになる友人である。
だがな、備前焼に詳しい私の眼を侮るんじゃないよ。信楽焼がなんぼのもんじゃい。結婚式の引き出物に備前焼が渡されるほど、私は備前焼とズブズブなんだからな。備前焼をくれた友人からは、このゴールデンウィークに出産祝いのお返しがあったりした。お返しは備前焼ではなくて、スープストックの詰め合わせだった。これ飲んでみたかったので嬉しいやつだ。ありがたい。
信楽作家市に行ってみてピンとくるものはなく、というか、この陶器を相手に送ってよいものだろうか、って感じだった。だけど作家市そのものはわりかし楽しくて、4時間ほど滞在した。
作品を見ていたら父親の分だけでなくて、先輩には植木鉢、友人には食器を買って郵送したりとかいろいろ考えて作品を探してみたりもした。だけどけっきょく、持って帰るのもめんどくさいし、郵送の手続きもめんどくさいので、なにも買わなかった。最高かよ。
自分用に陶器を買うのは考えてすらいなかった。ガラスや陶器など割れ物の食器は、すぐに落としてしまうので買う気になれない。先日、記念品にもらったビールのグラスは気に入って使ってはいたのだけれど、使い始めて2週間くらいで落としてしまい、割ってしまった。落とした一帯をガラスの破片が残らないよう慎重に、執拗に掃除機をかけた。ガラスの破片は踏んでしまうと痛いからね。危機回避に定評のある私だし。
おかげでグラスを落とした部分を歩いてもガラスの破片を踏むことはなかった。3日くらい経った頃、足裏に何かが刺さった感じがあって、慌てて確認すると血が出ていた。おいおい、掃除機をかけただろうがよ。ばかがよ。
そんな状態でわざわざ自分用に信楽作家市で割れ物を買って帰るはずもなく。信楽を満喫して京都に帰り、大丸で花を買って父親に送りました。